ベスト・プランニング(一級建築士事務所)

ブログ

Blog

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 南栗原B号棟 新全館空調システム(採用計画)

南栗原B号棟 新全館空調システム(採用計画)

ベスト・プランニングの衛藤です。

今回は南栗原B号棟の新空調システムの続きを記載していきたいと思います。

いつも以上にマニアックな内容になってしまいそうですが、絵も沢山載せますので、眺めて頂けたら幸いです。

実際の注文住宅設計の現場では、詳細解析の結果をもとに、間取りに合わせてた空調のご提案を実施しています。

 

※本物件は公開販売して間もなく(9月上旬)販売が終了しております。

分譲住宅は現在2棟工事中ですので、事前にご覧になりたい方は直接ご連絡下さい。

既にお問い合わせが多数ございますので、ご希望の方はお早めに!

 

 

前回は初期計画で、1台のエアコンで全館を冷やした場合想定される気体の流れ方を確認しました。

結果、今回の間取りであれば、扉を開けていればエアコンの冷気が概ね部屋全体に回ることを確認しました。

 

しかしながら、部屋を閉めている際は冷気が回らなくなってしまいます。

この問題を解決するために、機械の力を少し借りて全館空調とできないかと考えました。

 

最も手っ取り早い解決方法は、弊社であれば小屋裏エアコンシステムなど、ダクト式全館空調とすることですが、費用が掛かるという事がデメリットです。

そこで今回考えたことが、単なる強制パイプファンを室内と廊下の間に適切に配置して、冷気をドアの隙間から入れる方法です。

下の図に概要を示しています。

下記の図の様に各居室と廊下の壁にパイプファンを設置し、2階の各居室の天井に溜まっている暖気を廊下側に出し、1階の暖気は吹き抜けから2階天井裏を流れ、最終的にエアコンに戻ってきます。

冷気は2階のホールに溜まり、一部は階段を流れ1階に、その他は空気を抜いたことで負圧となった各居室に流入していきます。

パイプファンの設置位置は各居室でショートサーキットを起こさない様に留意し、数値解析を何度か行って上記のような気体の流れとなるように最適な位置を決定しています。

つまり全体的なポイントは暖気を適切にエアコン吸気に戻す事、冷気を満遍なく振り分けることですね。

さて、このようにした場合にはどのような気体の流れとなるでしょうか。

 

■ドアを開放してパイプファンを使用した場合

まずドアを開けてパイプファンを回したときの結果を下記に示します。

想定通り、居室の暖気と冷気が廊下側と循環して、パイプファンが無い時と比べて冷えていますね。

 

■ドアを閉じてパイプファンを回した場合

ドアを閉めた場合は勿論各居室は全く冷えません。

時々ドアのアンダーカットから冷気が入るから、少しは冷えるのでは?というご質問も頂きますが、居室と廊下の圧力が釣り合っていますから、気体のやり取りはほとんどありません。

 

さて、アンダーカットを模擬して、ドアを閉じた状態を模擬してきました。

アンダーカットは解析での計算の発散を防ぐために実情よりは少し大きめに設定しています。

 

結果は下記の通りです。エアコンのみの使用でドアを開けた場合と比較しましたが、ドアを閉めていてもそれなりに冷えていることが分かります。

 

 

■実地における測定結果

解析ではうまくいくことが分かりましたが、実際には想定通りうまくいったのでしょうか。

今年は6月下旬に強烈に暑い日が数日続きましたので、早速室温のデータ取り試験を致しました。

 

データ取得日及び前日は気温が35℃を超える猛暑日でした。

データ取得方法は、1週間前から全てのドアを締め切り24℃の自動設定で10畳用エアコンを1台のみ可動しています。

下記が温度データです。リビングは24℃の設定に対して24℃~25℃程度でほぼ一定となっています。

一方で今回の仕組みを取り入れた寝室は26℃~28℃程度となりました。

やはり1階と比較して若干エアコンの効きが悪いですが、全てのドアを締め切っている状態なので、この場合は昼間は開けっ放し、夜はドアを閉める運用であれば25℃~26℃一定と出来そうですね。

 

 

結果として、パイプファンでも計画時に適切に気体の流れを管理することで、大きな効果が挙げられることが実証できました。

昼間は日射取得が厳しいので、ドアは開けっ放しにしておく必要がありそうで、この点はこれまで実施してきた小屋裏エアコンシステムには負けてしまいますが、初期にかかるコストは小屋裏エアコンシステムが20~30万円なので、5万円程度で10万円かからずに実施したこのシステムは非常に有効であることが分かりました。

 

騒音量は計測ができていませんが、横浜市S様邸時の事前試験から数デシベルの増加でしかないことが分かっているので、大丈夫そうです。

今後は現在分譲住宅として施工中の家で、アローファンという少し大型の送風機器を用いて、全館空調を実施した内容についてお示ししたり、全館空調システムを追加で付けた方の様子をお伝えしていこうと思います。

 

今回も最後までご覧いただき大変ありがとうございました。