ベスト・プランニングの衛藤です。
今回は弊社の建売住宅で実験を行った新空調システムについてブログでお示ししていきたいと思います。
弊社では床下エアコンをはじめ、対流を使ったパッシブな全館空調の研究に取り組んでいます。
これまで冬場の暖房については対流効果によって非常に快適な住まいを実現してきました。
一方で夏場の冷気は対流が起こり辛く、様々な方法をご提案してきています。
特に効果が高いものがこれまでブログで取り上げてきた小屋裏エアコンシステムで、こちらは着々とご提案し、実績も増えてきました。
快適性も非常に高いことが室内温度計測結果と住んでいる方からのヒヤリングで判明しています。
こちらの小屋裏エアコンシステムも弱点があり、採用が難しいことがあります。
・(梯子でない)階段付き小屋裏がそもそもない場合
・小屋裏からのダクト配管経路が確保できない場合
・小屋裏エアコンシステムに費用を掛けたくない場合(20~30万、エアコン3台に相当)
そこで今回考案したものは、小屋裏エアコンを使用せずに簡単なファンだけで全館空調が可能な方法です。
こちらも間取りには左右されますが、採用可能な場合はかなり安価に全館空調が実施可能です。
今回はまず初期計画についてお示ししたいと思います。
本物件は座間市南栗原に購入した土地に建てた建売住宅です。(2022.9月末に販売は終了しております。)
去年・一昨年と注文住宅の受注を非常に多く頂き、購入したもののそのままになっていた土地でした。
今回はどこよりも性能の高い建売住宅を建てることをコンセプトに計画を始めました。
初期計画は間取りを弊社設計士と現場監督で考えていきました。
下記に間取りをお示しします。
無論、導線やファミリー層向けの使い勝手を重視した間取りとしています。
1階にLDKと水回りを設け、2階には3部屋とトイレを配した間取りとなっています。
2階中央には吹き抜けを絡めたホールを設け、ホールにはワーキングスペースと室内干しスペースを設けています。
小屋裏空間はあるものの、はしごで行くタイプなので、空気の循環の観点から小屋裏エアコンシステムが難しい状況です。
当初はこの間取りから、2階の南側にエアコンを設置し、冷気は2階のホールを流れ、一部は階段を流れ下り、一部は各居室に入っていくという流れが想定されます。
吹き抜け部は階段から流れ落ちた冷気に押し出されるような感じで1階から暖気が上がってきます。
1階から上がってきた暖気はそのまま天井を這い、夏用エアコンの上部から吸い込まれて冷却されていきます。
自然に大きな対流のような流れができていますので、これはこれで悪くなさそうです。
2階エアコンからの冷気が2階各居室に回ることが少し難しく、各居室のドアは必ず開放しておく必要があります。
この想像が大きな間違いをしていないか、数値解析シミュレーションで確認しました。
モデルは以下の通り、2階建てを模擬したモデルとなっています。
解析結果を以下に示します。
2階は全体的に冷え、1階にも十分冷気が落ちていることが分かります。
これは吹き抜けを設けた効果ですね。吹き抜け部(左図中央、右図中央)を見て頂くと、暖気がしっかり上がっていく様子が分かります。
この暖気が天井を這ってエアコンに戻っているため、暖気と冷気の循環が良い状態になっていると考えます。
一方で、2階の居室は特に北西側のWICが若干温度が高めですね。
エアコン気流に対して直交する部分についてはなかなか冷気が届き辛い状況が分かります。右側の(東側の)居室はエアコンの吹き出しから離れていることと、入口開口が広いこと(ドア二つ分)から、比較的冷えやすい状況となっています。
上記解析結果を受け、この間取りで空気の循環を更に良くするにはどうしたらよいか考えました。
冒頭記載のように性能の高い家というコンセプトですが、弊社のこれまでの研究成果・施工能力を実証したいという思いもあり、新たな取り組みができないかチャレンジをした工夫を取り入れることとしました。
計画の続きは来週お示ししたいと思います。どうぞお楽しみに!