ベスト・プランニングの衛藤です。
前回に引き続き、横浜市S様邸の小屋裏エアコンシステムについて述べたいと思います。
今回は少し画像が重たいので、wi-fi推奨です。(全部で3MB程度あり)
前回は計画のポイントと冷却能力の検討について書き記しました。
技術的なポイントをおさらい致しますと、下記の通りです。
~技術的ポイント~
1.冷房の冷却能力は適切か
2.冷気と暖気の空気循環は適切か
3.使用上の問題は発生しないか
4.施工性・コストパフォーマンスは悪くないか
今回は2の冷気と暖気の循環について検討を行った様子をお示ししたいと思います。
まず熱流体の数値解析を行うことができる”Flowsquare+”を使用して、流体のシミュレーションを実施しました。
流体のシミュレーションはモデル作成もさることながら、評価も少し難しくなります。
本シミュレーションの目的はあくまで定性的な評価を行うためなので、まずは2次元モデルを用いて小屋裏の機器の配置を検討しました。
結果の一例が下記になります。
簡単な小屋裏を模擬して、ダクト(ここでは5か所)を模擬し、気体が適切に流れるかどうかざっと見たものです。
結果、境界条件(流体が出る部分)までの流路の状態と出口までの距離でそれぞれの性能に差異が発生してしまうことが分かります。
従って、各機械位置は貯気槽において、給気(吸気)にムラの無いよう配置して取り付ける必要があることが分かりました。
次に気になることは、冷気が狙った通りに循環するかどうかです。
こちらは空気の密度の違いによる対流が関係しますので、空間を模擬する3次元モデルで模擬する必要があります。
1階から3階までの各居室の間仕切りと外壁を模擬したモデルが下記になります。
2階への階段と小屋裏への階段を模擬することで暖かい空気が上昇し、冷気は機械の風量を適切に模擬することで、全体の対流と冷気の分配が適切に行われるか確認しようとするものです。
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モデル概要
・1階/2階/小屋裏を模擬
・格子数 約347万点
・ファン流量 300㎥/h(※)
・冷気温度 290K(17℃)
・初期温度 310K(37℃)
・対流(重力及び密度変化)考慮
※解析時間短縮のため、若干過剰
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シミュレーションを実施した結果、ファンにより十分冷気を配分できることが分かりました。
まず建物垂直方向の温度分布からです。(温度のコンターは最も青い部分:17℃、最も赤い部分:37℃です。)
階層上下の空気のやり取りは階段室で行われることが分かります。
今回は小屋裏エアコンは2階30坪を冷却する想定ですから、1階は一部の冷気のみ落ちていてOKです。
次に平面の温度分布です。
こちらも想定通り、小屋裏貯気槽からの冷気を適切に配した機会により落とすと、2階全体に広がっていることが分かります。
温度分布のムラも若干はあることが分かりますね。
※解析内の時間は必ずしも一致しないが、傾向を捉えるシミュレーションのため問題でない。
解析を時歴順に並べると次のようなアニメーションができ、徐々に冷えている様子が分かります。
今回の解析の結果から、8点で冷気を落とす方法では2階30坪を全て冷やすことができそうであることが分かりました。
対流により暖かい空気が上昇することから、適切にエアコンまでの暖気流路を確保することが出来れば、この循環はうまくいきそうです。
次回は、技術課題の3番目と4番目、問題が起こらない配慮と施工についてお示ししたいと思います。
本システムや数値解析に興味・関心をお持ちのお客様は是非直接お問い合わせください