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上棟

大和市I様邸 上棟

ベスト・プランニングの衛藤です。

今年も残り1か月となったところで最近急に温度が下がってきましたね。最高気温が10℃前後となる日も増えてまいりました。

本日はOBの方の家に伺いましたが、大きな吹き抜けを設置した結果、家全体に対流が起きて非常に温度差の少ない状況(23℃~24℃一定)でした。

少し動くとすぐ汗ばむ位快適な室温で安心致しました。

一方で対流が強く起きてしまいますので、吹き抜け大きさと対流の関係は今後の研究課題と考えております。

 

話は変わりますが、半年前頃からインスタグラムの投稿を行う様になりました。

若い人のツールでなかなか操作が難しく、投稿するだけで一苦労ですが、ヘーベルウォールの対性能コストパフォーマンスや施工写真を載せていけたらと考えております。

トップページ右上から見ることができますので、是非ご覧頂けたら幸いです。

 

さて、今回は引き続き大和市I様邸の上棟の様子をお伝えいたします。

 

 

2020.12.10 撮影

上棟の日は朝7時過ぎから大工さん、現場監督さん、私が集合して作業開始となりました。

前回のレポートからは土台が敷かれ、材料が搬入され、足場が掛けられました。

集合したらまず皆で間取りを確認します。どのような構造材がかかるか、大きな部材はどこに配置されているのか認識を合わせる作業ですね。

事前に皆の認識を一致させておくことで、共通認識としての構造材を組み上げる順番が頭の中に想像できます。

 

 

まず最初に行うことは柱を立てることです。

柱はほぞという突起がついており、これを土台にあるほぞ穴に差し込むことで設置が行われます。

勿論これだけでは引張を受けることができないので、後ほどアンカーボルトという基礎に埋め込まれた金具と締結します。

柱を立てたままではふらふらして安定しませんが、梁を設置することで構造が安定してきます。

 

 

次は水平方向に設置を行う横架材です。

写真に見えている梁は胴差という名前の梁です。胴差は家の周囲を囲う様に配置される梁で、こちらを設置することで家全体の構造が安定します。

比較的せいが高く、長い部材が多いですので、写真の様にクレーンで吊り上げてから設置することが多いです。

隅の柱には予め金具が仕込まれていて、隅柱との結合はこの金具によって行います。

通常は仕口と呼ばれる凹凸で結合が行われますが、隅柱と胴差の結合部には多くの部材が寄り合うので、仕口を設けると隅柱に多くの切り欠きが発生して断面欠損が増えてしまいます。

そこでこうした断面欠損の小さくなる金物を使用します。

 

 

次は1階の中央の梁です。

リビングなど柱の少ない部分は、梁のサイズが大きくなる傾向にあります。

長さもあるため、重量が大きくなるのでクレーン車を使って設置し、仕口には「かけや」と呼ばれる大きな木槌で梁をたたき込みます。

写真では大工さんがかけやを大きく振りかぶっている様子が分かります。

上棟時にはこの木材を叩く、トントンという音が響き、日本の伝統的な建築らしい風景が見られます。

 

 

こちらは上棟に活躍しているクレーン車です。

一般的な住宅ではこのようなクレーン車を使用します。

クレーン車を置くスペースがない場合は、荷揚げ屋さんというパワーのある方々にお願いして手伝ってもらうこともあります。

クレーン車の運転手からは設置位置が見えないことも度々ございますので、大工さんが指示をしながらクレーンを任意の位置に操作することが多いです。

 

 

開始から2時間もたたないうちに、下の写真の様に2階床の梁までかけることができます。

梁が設置されたあとは、1階では「建て入れ」といって、建物の垂直を直す作業が行われます。

一方で2階ではそれぞれの梁の交差部に金物を設置する作業が行われます。

木造軸組み工法では基本的に各結合部はピン結合(回転荷重を取らない構造)として計算されます。

仕口の種類によっては回転を全く取れないこともないのですが、構造としては安全側に計算することが基本ですので、このように考える必要があります。

一方で鉛直や水平方向の軸力はしっかり伝達していく必要がありますので、金物で締結を行っています。

 

 

1階の建て入れは、下げ振りという材料を用いて鉛直を確認し、屋起こしという突っ張り棒で鉛直を直していきます。

柱の上下、梁は仕口のみで結合されており、柱が少し斜めに取り付いてもそれらしい形になってしまいます。

そこでこういった器具でその鉛直を正します。

こういった細かい作業を丁寧に行うことで、家の耐久性向上や内装への影響を長期間にわたって減らすことができるのです。

 

 

建て入れと金物の設置が終わった後は、2階の床板を敷く作業となります。

弊社では2階の床板は非常に重要と考えています。

重心に作用する地震荷重(水平方向の重量慣性力)は、剛心と若干のずれがあり、このため水平面に捩じりモーメントが発生します。

この捩じりモーメントは地震のせん断力と一部重なり合わさることになり、構造には厳しい方向に作用します。

そこでこの捩じりモーメントに耐え、外周部の耐力面材への伝達がスムースに行うことができるように、弊社では28mmの厚い合板を仕様しています。

一般的に使用される床板が24mmですから、捩じりモーメントに対しては40%近く強度が上がっていることになります(板厚は2乗で効きます)。

 

このように厚い合板のみで床を作ることを剛床工法と呼び、施工も容易であることから広く普及している方法です。

弊社では1階は根太工法を採用しています。1階は2階ほど細かく梁が入らないので、支持間隔を狭くして、且つ床下エアコンの乾燥した空気を沢山受けることのできる工法を選んでいます。

根太工法の方が若干手間がかかりますが、こうした工法は施工性や経済性だけでなく、先々の耐久性なども考慮し、理にかなったものを選択するべきと考えています。

 

 

2階の床合板が設置された後は、1階と同様にまず柱を設置し、その後2階の梁を設置してきます。

写真は2階の梁を柱に入れる作業を撮影しています。

このように梁と柱のほぞ穴を確認しながら、上部から大工さんが叩き込んでいきます。

 

 

写真の様に2階の天井まで柱と梁が設置が終わった後は、1階同様に金物設置と建て入れが行われます。

写真では既に金物設置はほとんど終わっているようですね。

奥の大工さん二人がなにやら梁の上で相談をしているようです。

 

 

2階では建て入れを行っていますが、写真には屋起こしが写っていますね。

この軸をくるくる回すことで棒が伸縮し、任意の梁を突っ張って動かすことができます。

鉛直がしっかりとれたと確認した後は、仮筋交いという材料を使って、その状況で仮止めを行います。

正規の筋交い(すじかい)を入れるまでに仮固定するという事ですね。

 

 

2階天井の梁まで設置が終わればいいよ小屋組みです。

小屋組みというのは屋根を受けるための構造を造る作業です。

まず写真の様に小屋束と呼ばれる、柱に相当する部材を設置していきます。

屋根の形に合わせて長さが異なっていることが分かりますね。

この部材は柱と同様に屋根の上下荷重を受けて2階に流す効果があります。

 

 

次は水平方向の横架材、母屋(もや)を設置していきます。

母屋は屋根の下地である野地板、垂木からの荷重を受け、小屋束に流す効果があり、1階2階の梁に相当する構造になります。

全体的に柱や梁と比べて断面の小さい部材が使用されますが、これは荷重が1階2階と比べると随分小さいことが理由です。

 

 

屋根面と屋根面切り替わり部分には隅木と呼ばれる部材が使用されます。

隅木はそれぞれの傾きが異なるので、四角い断面とはなっていません。

写真では隅木が真っすぐに伸びている様子を撮影してみました。

 

 

次は屋根下地の野地板を受ける垂木を設置していきます。

写真では既に設置されている状態ですが、このように長い部材を屋根の上下方向に細かいスパンで設置していきます。

母屋とは釘で設置がされていきますが、下方端部では軒が風であおられる荷重が強いので、専用のビスで垂木と梁を締結していきます。

 

 

最後に野地板を設置して終わりとなります。

野地板は先に設置した垂木に釘で細かく締結されていきます。

野地板は合板を2階から手で上げることになりますので、野地板を上げる人、釘を打つ人と役割分担で進めていきます。

野地板は透湿性が低いため、屋根を長持ちさせるためには工夫が必要です。

弊社では野地板の室外側、室内側に結露が起きない様に通気を取っています。

具体的な方法は次回お示ししたいと思います。

 

 

野地板を貼り終えると一通り上棟作業は完成です。

一日で土台のみから骨組みが一気に立ち上がりましたね!

 

 

上棟後は上棟式を執り行いました。

上棟式は四方固めと言って、家の角を清める儀式を大工さんと行います。

昔は地域の方をお呼びしてお餅や小銭の入った袋を投げたりする行事などありましたが、最近はこのような形で実施することが多いです。

 

 

今回は以上でレポートを終えたいと思います。

 

次回はI様邸の内部施工の1回目をお伝えしたいと思います。